セパタクローって知ってる?~ベトナムが強豪のスポーツ~

2016/03/09 JST配信

皆さんは「セパタクロー(sepak takraw)」というスポーツを知っていますか? 日本ではあまり知られていませんが、東南アジアでは盛んなスポーツで、ベトナムでは特に女子が強豪として知られています。

セパタクローの「セパ(sepak)」はマレー語で「蹴る」を意味し、「タクロー(takraw)」はタイ語で「(藤で編んだ)ボール」のこと。つまり「ボールを蹴る」競技です。サッカーとは違い、間にネットを挟んで対戦するスポーツで、簡単に言うと「フットバレーボール」とも呼べるもの。

東南アジア競技大会(SEA Games、シーゲーム)でも公式競技となっており、ベトナムが強豪国であることから、住んでいるとテレビ中継でセパタクローを目にする機会があると思います。一度目にしたら、そのスピードとアクロバティックな動きに釘付けになること間違いなしです。今回は、そんなセパタクローについて紹介します。

セパタクローはこんな競技

まずは、セパタクローがどんなスポーツなのか、動画でお楽しみください。ダイジェストだけでも、その迫力が十分堪能できると思います。

ボールは、伝統的に籐を編んだものが使われていましたが、現在はプラスチック製です。 ベトナム語ではセパタクローのことを「cầu mây(カウマイ)」 と言います。cầuは「球」、mâyは「籐」の意味です。

(C) T. Kondo, セパタクローのボール

セパタクローの歴史

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セパタクローの起源は9世紀にまで遡ります。東南アジア各地で行われていた伝統スポーツを原型に、現代になって一つの競技として統一されました。1965年にシーゲームの競技種目に採用された際、アジアセパタクロー連盟が設立され、統一ルールが作られました。1988年には国際セパタクロー連盟が設立され、その人気はアメリカ大陸、オセアニア、ヨーロッパへと世界的に拡大しています。1990年には北京で開催された第11回アジア競技大会より正式種目となりました。

セパタクローのルール

簡単にルールをまとめると、1チーム3人1組で対戦し、バドミントンのコートの中で、直径14cmほどのプラスチック製の籠状のボールを使い、足でバレーボールをします。基本的にはバレーボールのルールに似ているのですが、次のような相違点があります。

 1. 腕、手を使ってはならない

 2. 1人で続けて3回までボールにタッチしてよい

 3. 守備位置のローテーションはない

 4. サーブ権は3本ずつで交代

ゲームは、クオーターサークル(ネットの端にある半月型のサークル)にいる味方選手が、サービスサークル(自分の陣地の中心にあるサークル)にいる味方選手にボールをトスし、それを蹴って相手のコートに入れることから始まります。ボールに3回タッチするまでに相手コートにボールを落とせば1点となります。

1セット21点のラリーポイント制(デュースの場合は25点まで)で、2セットを先取したチームが勝ちとなります。第1・第2セットを1セットずつ取った時は、第3セットで21点(デュースの場合は最大で25点)を先取したチームが勝ちとなります。

ルールをわかりやすくまとめた動画がありますので、参考にしてください。

セパタクローのここが面白い!

セパタクローの見どころは、なんといっても アクロバティックな動き でしょう。アタックするときの動きは、まさに空中芸です。そして、アタックをブロックするディフェンスもまた豪快で、まさに 「空中の格闘技」。 また、トップレベルの選手のアタックのボールの速さは、なんと時速140kmを超えるともいわれており、プロ野球のピッチャーが投げるストレートと同じくらいの速さなんです。こんな速球を足で受け止め、つなげて、アタックまでもっていく・・・・。映像を見るだけでもその迫力やダイナミックさ、アクロバティックさが伝わってきますが、生で、さらに近くで見るともっと迫力満点です!

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ベトナムでの人気は?

ベトナムのセパタクローのレベルはどの程度なのでしょうか。ナショナルチームの世界ランキングを見てみると、ベトナム男子は世界ランク16位(2015年4月28日現在)ですが、 ベトナム女子は世界ランク2位(2015年4月28日現在)と世界トップを狙うレベルです。 ちなみに、世界ランク1位は男女ともにタイが維持しています。

また、アジア競技大会におけるセパタクローの金メダルの獲得数を見てみると、タイが14個でトップ、次いでマレーシアが3個、ベトナムが2個(いずれも女子)となっています。この戦績を見ると、 セパタクローは世界に誇れるベトナムのスポーツ と言えるのではないでしょうか。

但し、ベトナムではサッカーが一番人気で、他のスポーツはすべてその影に隠れてしまっているような状況です。また、ベトナムで老若男女広く行われているバトミントンほど誰でもできるスポーツというわけでもありません。そのため、ベトナム人に好きなスポーツを聞いて「セパタクロー」という返事が返ってくることはあまりなく、残念ながら「人気が高いスポーツ」とは言えません。しかし、元々サッカーが好きなお国柄ですので、熱心なセパタクローファンも結構います。

また、ベトナムでは、毎年9月頃にセパタクロートーナメント「ハノイ・オープン」が開催されています。元々は男子のみの大会でしたが、1998年から女子のみの大会になっているようです。これもベトナムの女子チームが男子チームに比べて圧倒的に強いからでしょうか。今後男子チームにも期待したいところです。

ベトナムでセパタクローをやるには

セパタクローをやるには、まずボールを手に入れる必要があります。ボールは、ホーチミン市の場合だと 統一会堂裏手のスポーツ用品通り(Huyền Trân Công Chúa通り) など、スポーツ用品を扱うお店出で簡単に入手することができます。ボールの多くはセパタクローの強豪国タイから輸入されているようです。

セパタクローは一人ではできません。ベトナムでは、大きな公園に近所の人たちが集まって、輪になってラリーをしたりする姿を目にします。まずは早朝や夕方の公園でやっている人に混ぜてもらったりしながら、仲間を集めるという手もあります。誰かに教えて欲しいという場合には、地域のスポーツセンターでセパタクロー教室が開催されていたりしますので、「cầu mây」を頼りに探してみましょう。

(c) VIETJO Life

セパタクローはまだ日本では馴染みのないスポーツで、周りの人に「セパタクローって知ってる?」と聞いても、「なんだそれ。食べ物の名前?」といった反応が返ってきたりしますが、最近は大学生を中心に普及してきており、今後競技人口が増えていくかもしれません。そのうち、ベトナムチームが日本へ遠征したり、日本チームがベトナムで試合をすることもあるかもしれないですよね。そんな日がきたときに、「そういえば前にセパタクローについて書いてあったな」とこの記事を思い出していただければ幸いです。