Tシャツ(GINO-T)で技能実習生問題は解決できるか

2021/01/11 JST配信

『GINO-T(ギノティ)』は、ベトナム人技能実習生の失踪・過労死・自死などの解決を目的としてつくられた、職場のコミュニケーションを支援するTシャツです。詳細については引き続き記事をお読みください。

ベトナム人が働く奄美の島で
 アインさんがはじめて沖永良部島(おきのえらぶじま)にやってきたときの印象は、「ベトナムと似ている」。亜熱帯気候の島は平均気温が22度、ハノイは24度なので、その近郊で育った彼にとっては少し寒い程度だった。

 技能実習生として就いた仕事はキクラゲ栽培。同時期にやってきた2人のベトナム人同僚たちと精を出す。あるとき、寮に成人式の知らせが入っており、日本人社員の芋高さんに見せると、「お母さんに元気な姿を(写真で)見せたら」とスーツや出席をはからってくれた。
 


 3年間の実習期間を終え、2月からは大阪で看護師か介護士として働きはじめる予定。「日本人と結婚して日本で暮らしたい」と話す彼の笑顔には、充実した島生活が感じ取れた。

 アインさんのように、島で働く実習生は多い。12,000人強の島で80人前後、その9割以上がベトナム人だ。夏場は早朝、自転車で畑に向かう男女たちの姿が見られる。車社会の島では珍しいあまり見ない光景のため、農作業姿もあり誰もが「ベトナムの子達か」と分かる。

「暑さ知らずでよく頑張ってくれる」
「こんな何もない島によく来てくれて」
「コロナ(の影響)で帰れず辛いだろうに」

 彼らを労い、島の子どもたちと同じ目線で見守るかのような声も島では聞かれる。平和な環境、良好な関係。しかし遡ること二年と少し前、島中を「あるニュース」が駆けめぐった。

メディアへの反発から生まれた日越交流
 全国紙運営のニュースサイトで、過去の実習生の失踪から「逃げていく島」と名指しされた。複雑な背景や島民感情から、島に対して批判よりも同情に依った内容ではあったが、それでもそのセンセーショナルなタイトルと、記事に反応したネット上の批判の声に島は揺れた。

 農業は島の柱。事態を危ぶんだ町議会では、「島に監理団体を設立してケアをできないか」「ベトナム語を話せる人に島に常駐してもらえないか」などの議論が巻き起こった。

 記事に対して議会とはまた異なる対応をとったのが、島の若手農家集団「エラブネクストファーマーズ」リーダー、要(かなめ)さんだ。彼自身は実習生を雇っていなかったが、「彼らが暮らしやすい環境をつくりたい」と、ベトナム人と日本人の交流会を企画。テト(ベトナム正月)に合わせて開催したところ9人の実習生が参加、さらにその翌年に開催した交流会では一挙に34人の実習生をふくむ70人規模のイベントとなり大いに盛り上がった。
 


私が沖永良部島に住んだワケ
 ここで突然だが、筆者(ネルソン水嶋)はベトナムで8年間物書きをしていた。

 近年耳にするようになった実習生の諸問題。失踪や、不法滞在不法就労、狭い寮や残業代が出ないといった待遇の悪さ、過労死、中絶、自死など。個人的に気になって取材をして記事も書いていた。沖永良部島は実は母の故郷、たまたま家の用事で訪れたところ交流会に誘ってもらったことがきっかけとなり、今は取材から踏み込んで問題解決に取り組んでいる。

 その解決策、『GINO-T(ギノティ)』という名のTシャツを皆様に知ってほしい。

Tシャツでベトナム人技能実習生にまつわる問題は解決できるか
 ベトナム人実習生の諸問題をどうすれば解決できるか。取材と交流会参加の体験から行きついた答えは、単純でありつつも重要である、「コミュニケーションをとること」だった。たとえば日本語を学んでも方言が分からないといった、些細なボタンの掛け違いがやがてお互いの諦めに変わり、やり取りから人間性が失われていく。それでは人間関係も築けない。

 GINO-Tは、現場で使う言葉をベトナム語と日本語で、またそれをあらわすイラストが印刷されている。作業指示のサポートも機能としてあるが、それ以上に「コミュニケーションをとる」という意思を視覚的に伝えることで豊かな人間関係の土台をつくることが目的だ。
 


 実際に試作品を提供した事業所では、現場に合わせた用語ではないため実用には向かないが、「以前より実習生から相談してもらえるようになった」「(日本人側が)コミュニケーションをとろうという意思表示になった」という評価をいただいた。
 

クラウドファンディング実施中!
 現在、GINO-Tは開発中であり、クラウドファウンディングサイト『READYFOR』にて、『Tシャツに印刷するイラストを100通り制作する』ためのプロジェクトを実施中(2/1 23:00まで)。詳しい背景や経緯、今後の予定などは下記リンク先のページをご覧ください。

 ベトナム人実習生の失踪・過労死・自死などを解決する"Tシャツ"開発
 https://readyfor.jp/projects/gino-t/

 お問い合わせ:mizushima_t@salmons.work(ネルソン水嶋)

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