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ベトナムの救急救命事情~危機管理を忘れずに!~

2015/08/14 JST配信

ベトナムで「事故」にあったり、急な「病気」になったらどうしよう、と思われている方も多いはず。ベトナムはバイクが昼夜問わず入り乱れ、交通事故の危険性も高いです。その一方で、「もしも」のときへの備えが十分でないのも事実。 「日本だったら助かったのに・・・」 というような状況が起こりえます。

とはいえ、「万が一のときに備えるといっても、どうすればいいのか?」と思う方も多いのでは。そこで今回は、 救命処置をベトナムで広げる ことを目指し、AED(自動体外式除細動器)の販売を開始した ALSOK VIETNAM と、ベトナム日系企業として初めてAEDを導入したホーチミン市1区にあるサービスアパートメント サイゴンスカイガーデン の担当者の方にお話をお伺いしました。

ベトナムの救命事情 ~救急車が到着できない!?~

まず、ベトナムの救命事情はどうなっているのか、ALSOKの奥村一樹さんにお話を伺いました。

ALSOK 奥村一樹さん

奥村さん:

「日本と比べて救急救命体制が整っていないのが現状です。救急車を呼んでも、渋滞などで到着するまでに時間を要する場合もあります。日本では救急車が通るとき、道を譲らねばなりませんが、ベトナムでは譲らないことも多いのです」。

日本では教習所で救急車両が通過する際の道の譲り方を教えますが、ベトナムではそういった教育が徹底していないのが現状です。

奥村さん:

「ベトナムにある外資系医療機関には日本と比べて遜色のない救急車がありますが、ローカルの救急車には 酸素ボンベすら備え付けられていない車両も あります。さらに、医療従事者が救急車に乗っていないことも多く、移動中に応急処置を受けられない可能性もあります」。

しかも、ベトナムのローカル病院では手術の際に前金を払うのが原則。到着したのがローカル病院だと、「治療費が払えるのか確認できないから」という理由で治療を開始してもらえないこともあるのです。こんな状況で、大きな事故や急な病気になったら・・・。そこで、まずは身近なことでできる対応策についてお伺いしました。

救急搬送体制のある病院、すぐに連絡先わかりますか?

奥村さん:

「仮に病院まで搬送したとしても、そこに該当する専門医がいるとは限りません。そのため、どの病院ならちゃんと対応してくれて、どのような専門医がいるのかを事前にしっかりと把握しておく必要があります。

また、救急番号(115番)や病院の情報一覧を控えておき、緊急時に素早く対応できる状態にしておくことが大切です」。

実際にALSOKは社内で、次のことを実践しています。

① 救急番号(115番)、消防番号(114番)、警察番号(113番)を貼り付けておく

② 救急対応の病院リスト、連絡先を貼り付ける

③ 既往症についての情報共有

④ 保険に入っているからと言って安心せず、必ず年に1回は契約内容など見直す

どれもすぐに実践できる事柄ですよね。

日本人なら誰でも知っている緊急の際の電話番号、驚くことに ベトナム人は知らない人が多い です。番号やリストを貼り付ける場所は皆の目につく場所であることは当然ですが、貼り付ける場所を社員に周知徹底しておく必要があります。

また、薬剤やラテックスなどのアレルギーや既往症によって治療方法を変える必要がありますので、事前に医師が知っておくべき事項がある人は、よく行動を共にする人、事故の際に対応を担当する人などに、しっかりと伝えておきましょう。

AEDによる一次救命措置

そして、もしもの際は、「病院に行くまでの間」の「一次救命処置」が最も重要です。なぜなら、死亡や障害につながる大きな要因は 心肺停止 であるためです。AED(自動体外式除細動器)は一次救命処置として、この心停止状態から脱するために極めて重要な役割を果たします。

AED(Automated External Defibrillator)

心停止には、「心室細動」と呼ばれる心臓が細かく震えて血液を送り出せなくなる状態に陥っているものがあり、これは電気ショックで解消できます。AEDを使用することで心臓の状態判断して、自動的に電気ショックが必要かどうかを教えてくれます。そして、電気ショックを与えることで、心室細動を止めて正しい心臓のリズムに戻すのです。

心肺停止後に起こる症状は次のようになっています。

① 心肺停止から、およそ3分で人の脳に障害がでる

② 心肺停止から、およそ1分ごとに7~10%の割合で死亡率が高くなる

③ 心肺停止から、およそ8分で死に至る

ですから、AEDの果たす役割はとても大きいのです。心停止が起きたとき、AEDがなければ、救急車が来る前に大方のケースで手遅れとなってしまうでしょう。

奥村さん:

「日本では救命処置の講習を何かしらの形で受けたことがある人がほとんどですが、 ベトナムでは救命処置の講習を受けたことのない人がほとんどです。 ですからAEDがあったとしても、誤った知識で処置をしてしまう可能性があります。私たちは、AEDを普及させること、そして救命処置に関する啓蒙活動をベトナムで行うこと、この二つに注力していきます」。

実際にAEDを導入したサイゴンスカイガーデンでは

サイゴンスカイガーデンは、ベトナムにある日系サービスアパートの中でいち早くAEDを導入しました。サイゴンスカイガーデンの寺居宏社長にお話を伺いしました。

寺居宏社長:

「サービス業を営む者として、お客様の命の安全を考慮しなければなりません。そのうえでAEDは必要不可欠なものの一つと考え、設置しました」。

AEDを導入したサイゴンスカイガーデン

AED引渡しの際は、ALSOKによる無料講習が実施されました。ベトナム人従業員は、「救命救急の講習を初めて受けたが、とても勉強になり、自信につながった」と皆満足していたということです。

寺居社長:

「サイゴンスカイガーデンがあるレタントン通りは『日本人街』とも呼ばれ、多くの日本人が行き交います。『もしも』の時には、 AEDがスカイガーデンにある ということを思い出していただければ」。

レタントン界隈で生活する人にとっては、とても心強いですね。

エントランスに設置されたAED

大切なのは「もしも」の備え

大切なことは、ベトナムは日本と違い、まだまだ救命処置に関する認識が遅れているため、 できる限り緊急時に備えておく必要がある ということだと思います。AEDは、あくまでも命を守る一つの手段です。最も重要なのは、ベトナムにいるということは、日本にいるときよりも危機管理を強く意識する必要があります。

現地で楽しく生活するためには、安心・安全が第一。日ごろから「もしも」に備えておきたいですね。

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