[越] Đầu lân(ダウラン)、Hàm rồng(ハムゾン / ハムロン)、Cây Sala(カイサーラー)、Cây Thala(カイターラー)Ngọc kỳ lân(ゴックキーラン)
[英] Cannonball tree
[学] Couroupita guianensis(サガリバナ科)
[原産] アマゾン川流域を中心とする南米
[分布] 南アジア、東南アジアの熱帯地域
[ベトナム国内分布] 南部
[開花時期] 通年咲くが、2~5月に最も花がつく|
ベトナムでは「沙羅双樹」
日本では植物園ぐらいでしか見ることのできない南国らしい花ですが、和名がちゃんとありまして、 ホウガンノキ と言います。若干錆びた大砲の弾にそっくりの実がなることから英語で「Cannonball tree」と呼ばれており、それがそのまま訳されています。
(C) VIETJO Life
ベトナム語ではたくさんの呼び名があるのですが、花の形に注目して Đầu lân(ダウラン)、Hàm rồng(ハムゾン / ハムロン) と呼ばれたりしています。Đầuは「頭」、lânはベトナム版獅子舞「Múa Lân(ムアラン、麒麟舞)」の「麒麟」。口がパカパカ開く麒麟の頭と花の形が似ていることから名付けられました。Hàmは「顎」、rồngは「龍」のことで、こちらも龍の顎に似ているというわけです。
(C) NgBK
また、ベトナムでは Cây Sala(カイサーラー) つまり「サラの木」とも呼ばれます。この「サラ」は、あの有名な 「沙羅双樹」 のこと。仏教では、お釈迦様は2本に並んだ沙羅の木(沙羅双樹)の下で入滅した(亡くなった)とされています。元々インドでサラの木とされているのは白い花を付けるフタバガキ科の木なのですが、スリランカに仏教が伝わった際、このホウガンノキをサラの木とするようになったそうで、東南アジア各国でもホウガンノキをサラの木とみなすようになりました。そのため、ベトナムを含め東南アジアでは聖なる木として お寺の境内に植えられていることが多い です。
なお、ホウガンノキは寒さに弱いため、ベトナムでは南部の通年暑い地域でしか見ることができません。
ホウガンノキの特徴
(C) ホーチミン市フーミーフン地区マンション入り口に植えられたホウガンノキ
ホウガンノキは高さ30~35mにもなる大きな木です。そのため、大きな公園やお寺の境内に植えられています。花がつくのは葉の生い茂っている枝より下の部分。ヘビのようにうねった枝がたくさん伸び、そこに花が咲いて実がなるので、大きく成長する木なのに、花を間近で観賞することができます。幹に近い低位置に花をつけるのは、高い木が密集する熱帯林の中で効率的に昆虫を集めて受粉するための戦略なんだそうです。
(C) NgBK, 一応落葉樹なんだそう(9月に ビンクオイ1 にて撮影)
花のサイズは10cmほど。内側が濃いサーモンピンク色の花びらが6枚、蓋のようにかぶさった雄しべの束が目立ちます。実はこの雄しべ、昆虫を引き寄せるおとりの役割をしていて、この花粉は受粉しないのだそう。本来の雄しべはこの蓋の下側、花の中央部分に雌しべを取り巻くブラシのようにびっちり生えています。
(C) NgBK
花の香りは、言葉で表現するのが難しいですが、 かなり濃厚で独特な良い香りです。
(C) VIETJO Life
実のサイズは20~30cmほどで、中には種が200~300個ほど入っているそうです。中を割ってみた人の話によると、熟すとものすごく臭いのだとか。世界のごく一部地域で食用としているところもあるようですが、ベトナムでは食べませんし、活用されている様子はありません。但し、抗菌や防カビなどの効果のほか、鎮痛効果もあるらしいです。
ホーチミン市の中心では、 サイゴン動植物園 で見ることができます。なんせ実が大きくて硬いので、木に近づくときには実の落下に注意してくださいね。