[越] Rau muống(ザウムオン / ラウムン)
[英] Water Morning Glory、Water spinach、Chinese spinach
[学] Ipomoea aquatica(ヒルガオ科サツマイモ属)
[原産] 熱帯アジア|
ベトナムでもっともポピュラーな野菜
空芯菜は中華料理でよく使う野菜ですが、もともとは熱帯アジア原産で、ベトナムでも週に2~3回は食べるというほどポピュラーな野菜です。ベトナム全土で採れ、年中出回っていますが、特に北部では5月~8月の暑い時期のものがおいしいそうです。つる性の多年草で、葉はサツマイモのハート型の葉を縦長にしたような形。茎の芯が空洞になっていることから「空芯」の名がついていますが、ベトナム語のRau muống(ザウムオン / ラウムン)のmuốngは、一説によると「漏斗(ろうと、じょうご)」という意味があるようで、やはり芯が空洞であることから名づけられたのかもしれません。
湿地帯ならどこにでも雑草のように生えていますが、流通しているものは空芯菜畑で育てられています。ベトナムの空芯菜には2種類あるようで、上の画像のように葉が細長いものと、もう少し丸みを帯びてハート型により近いものがあります。
(C) NgBK 空芯菜畑
【豆知識】ベトナムのことわざに「Rau muống tháng chín nhịn cho mẹ chồng(9月の空芯菜は我慢して、姑に与える)」というのがあります。最盛期が終わった9月の空芯菜はおいしくないので姑に食べさせてしまえ、ということらしい。ベトナムでも嫁姑の関係は微妙なようですね。
空芯菜の栄養はホウレンソウの何倍も
空芯菜は栄養価の高い野菜で、英語でWater spinach(水ホウレンソウ)と呼ばれていますが、ホウレンソウをはるかにしぐほど。カルシウムが4倍、ビタミンAが5倍、ビタミンB群が2倍、ビタミンCが2倍も含まれているそうです。また、βカロテンが豊富に含まれているのですが、βカロテンには抗発ガン作用や免疫を活発にする働きがあります。更に、汗と共に失われてしまうカリウムやビタミンB1・B2が豊富なので、夏の暑い時期に積極的に取ると良い野菜。やはり、暑い時期においしいものは、暑い時に食べると良いということなのでしょう。鉄分や葉酸も含んでいるので、妊婦さんにもおススメです。
茹でたり炒めたり、生のまま麺の付け合せにも
(C) VIETJO Life 緑色のクルクルしたものが空芯菜
空芯菜の炒め物が有名ですが、茹でて食べることも多いです。また、スープの具にもします。外国人は気づきにくい使い方として、ブンボーフエなどの麺と一緒に出される山盛りの野菜にも空芯菜がよく入っています。空芯菜の葉を落とした太い茎の部分を細く裂いたもので、クルクルになった状態で出てくるので、空芯菜と気づかずに食べている人も多いのではないでしょうか。
(C) VIETJO Life
家庭でクルクル巻きの状態にしたいときは、この器具を使うと良いでしょう。市場の金物屋や大型スーパーで簡単に手に入れることができます。この器具は一般的に「Đồ chẻ rau muống(ドーチェーザウムオン / ラウムン)」と呼ばれています(Đồ=モノ、chẻ=割る)。日本語だと「空芯菜カッター」などと言うようです。
(C) VIETJO Life
棒の部分に空芯菜の茎を通して押し出すと、先端の刃の部分で茎が裂かれる仕組み。裂かれた空芯菜は水にさらすとクルクルになります。この器具を使わなくても、茎を少し叩いて手で裂くこともできます。軽く湯がいてからサラダにすると食べやすいです。
(C) NgBK 空芯菜のニンニク炒め(Rau muống xào tỏi)
但し、空芯菜の葉の部分はモロヘイヤのようにヌメリがあるため、炒め物にするときは、大きな葉は取り除いて葉の量を減らしたほうがおいしいです。中には、葉を全部取ってしまう人も。筆者の子供の離乳期には、茎の部分は大人用の炒め物にし、葉の部分は茹でて細かく切って、離乳食に混ぜていました。味にクセがないので、ホウレンソウが苦手な子供も食べやすいと思います。
選び方と保存方法
空芯菜を選ぶときは、なるべく切り口がみずみずしいもので、葉先まで張りがあって、緑が濃くあざやかなものを選びましょう。
乾燥に弱くすぐにしなびてしまうので、買ったらなるべく早く食べるのが一番良いですが、冷蔵庫に保管する場合は、茎の部分に濡れたキッチンペーパーをまきつけ、全体をビニール袋や湿らせた新聞紙で覆うと持ちがよくなります。軽く茹でた後に冷凍保存もできますが、歯ごたえが悪くなります。
|【ポイント】火を通すと色が黒くくすみますので、料理はなるべく手早く。シャキシャキおいしく仕上がります。|